
浜育ちの私は釣りが日課みたいなものだった。
卸市場のバイト先でもらったブロークンの冷凍海老。
これをエサにして勝手知ったる、
ガシラ(カサゴ)やアブラメ(アイナメ)の穴から、
毎夕、釣り上げていた。
型が良ければ、煮付けかフライ、
小さければ味噌汁の具となる。
新鮮な瀬戸の小魚は、高級魚に劣らぬ美味さだった。
海のそばから生活の場が離れると、
次第に魚を食わなくなった。
買ってきた魚は評判の魚屋のものですら、別物だったからだ。
それでも目的地が海であるならば、
旅先では旬の魚を食べるようにしている。
ロケーションが魚を美味しくしていると信じて・・・。
そんな旅先でいいなと思った店が、
広島は鞆の浦にある小さな食堂「おてび」だった。
扱っている料理は、いわゆる小魚料理。
高級魚ではなく、地元で取れる大衆魚を使った料理だ。
手づくりの惣菜が並ぶカウンターに座る。
せっかく平日に来たのだからと、
限定の「日替定食」(650円)に決めた。
この店は隠れ名物に美味しい中華そばがあって、
あわよくば、ソレもいただこうと思ったのだ。
ところが650円なのに品数豊富。
一人旅のネックは得てして、こういうところに表れる。

メインの煮付けに箸を着ける。
ほっこほこだ。
新鮮な魚に見られる身離れの良さ。
小骨が多いからこそ、新鮮という条件が不可欠なのだ。
自分の記憶にない魚だったので、
聞いてみると“コチ”と言う。
さすが、今が旬の魚じゃないか。
私が釣りをしていた浜では、釣れるのはコチはコチでも、
テンコチと言って、ヌメヌメで身もほとんどない外道。
天ぷらにしたら美味しいとか聞くが、
近所で食べたという話を終ぞ聞くことがなかった。
そんな思い出を楽しみながらの楽しい昼食。
こんな店が近所にあったらなあとしみじみ思う。
おてび
住所/広島県福山市鞆町鞆838
電話/084−982−0808
営業時間/11:00〜22:00
店休日/毎月曜日、第3日曜日



